1. 高強度レーザー電磁場によるプラズマの超高温加熱の物理
ペタワットを越える超高強度レーザーとプラズマの相互作用によって発生する高エネルギー電子ビームとイオンビームの特性を明らかにし,それらのプラズマ中での発生・伝搬・エネルギー散逸を理解し,更に制御することで,核融合点火温度である5000万度までのプラズマ加熱を実証します.制御手法として,プラズマミラーの開発やキロテスラ磁場等々,新しいアイディアを積極果敢に導入します.
図 激光XII号レーザーで圧縮したプラズマをLFEXレーザーで加熱します.加熱を効率的に起こすために,激光XII号を使ってキロテスラ級の磁場を発生し,加熱ビームをガイディングします.実験結果はシミュレーション結果と比較しながら,現象を理解していきます.
図 高速点火レーザー核融合実験の一例.X線画像,X線スペクトル,中性子計測器等の各種計測器を用い,プラズマ中で起こる様々な現象を観測します.
2. 極限プラズマ物理
相対論プラズマやWarm Dense Matter 領域の幅広い高エネルギー密度状態を多様なレーザー装置及びターゲットを工夫して創り出し,キロテスラ磁場やギガバール圧力下でのプラズマ物理を開拓します.極限プラズマ中での流体運動,光放射,核反応等を研究します.この研究は,恒星の内部や高エネルギー天体の周囲で起こっている物理現象を実験室で再現 し,その物理過程を理解することに繋がります.
図 レーザー生成超強磁場を用いたプラズマ科学の広がり.核融合プラズマから天体プラズマに広がる物理を調べることが可能.
図 レーザー生成プラズマを利用した光電離プラズマ研究.ブラックホール近傍で生成されている光電離非平衡プラズマを実験室にて再現し,プラズマ中の現象を解明.
3. 極限プラズマ計測・診断技術
緻密な実験には精密な計測技術の開発が必須です.コンプトン散乱現象を利用した硬X線分光器,硬X線と物質の光核反応を利用したX線スペクトロメーター,1ピコ秒程度のX線パルスを利用した高密度プラズマのラジオグラフィー,相対論的電子からのコヒーレント放射光を利用した輸送伝搬計測法,レーザー加速プロトンを用いた電磁場計測などを開発しています.
図 パルス幅1 psのパルスX線を利用したレーザー拡縮プラズマの時間発展の計測.時間を追う毎に高密度プラズマが形成される(中央部の影)と同時に,レーザー導入用のコーン(左の影)が丸まっていく様子が明確に観測された.(米国ネバダ大学澤田先生との共同研究)
図 レーザー加速プロトンを用いた電磁場計測.
4. 高強度レーザー生成X線の研究
レーザー駆動プラズマから放射される波長1ナノメートル(軟X線)から100ナノメートル(極端紫外(XUV/EUV)光)の高強度超短波長光と物質の相互作用に関わる,基礎及び応用研究を行なっています.この波長域は長波長光のそれとは一線を画す面白い特性をたくさん備えています.世界でも数少ない高強度超短波長光源を用いて学術的発見から産業応用まで,幅広い出口につながる成果をあげています.
図 高強度短波長光源.集光系を用いて109 W/cm2<\sup>という高強度のXUV/EUV/VUV(真空紫外)光をサンプルに照射することができます.
図 XUVアブレーションプラズマの物理と応用に関するこれまでの主な成果.