2025.10.7
藤岡さんが、JSTムーンショット目標10プログラムのプロジェクトマネージャー(PM)に選出されました。
ムーンショット目標10は、「2050年までに、核融合エネルギーの多様な応用を通じて、資源制約から解放され、地球環境と調和したダイナミックな社会を実現する」ことを目指します。
大阪大学からもプレスリリースされました。
2025.10.1
10月1日より、特任事務職員として三和さんがLFグループに加わりました。
2025.9.14
2025年9月14日、フランス・トゥール会議センターにおいてJSPS Core-to-Coreプログラムの国際ワークショップが開催されました。本会合は日本、フランス、米国、ドイツ、ルーマニアなどの研究者ネットワークにより構成され、レーザー慣性核融合(IFE)に関する最先端の研究成果と課題について活発な議論が行われました。参加者は現地が60名、オンラインが10名でした。
最初の講演では、浜松ホトニクスの関根尊史氏が半導体レーザーダイオード励起による1 kJ級Yb:YAGレーザー開発の進展を報告しました。ヘリウムガス冷却を用いた高繰返し動作により200 J級パルスを10 Hzで実証し、今後の1 kJ級動作に向けた課題として光学コーティングの損傷が挙げられました。続いてCEAのXavier Ribeyre氏が、慣性核融合炉の歴史と展望を整理し、NIFでの点火実証を踏まえ、直接照射、間接照射、高速点火、衝撃波点火を比較しました。また、ターゲット供給、ブランケット設計、トリチウム供給不足といった炉心設計上の重要課題が示されました。
Imperial College LondonのAdam Dearling氏は、ICF関連プラズマにおける磁場の生成と輸送の研究を紹介しました。プロトンラジオグラフィーを用いてNernst効果やBiermannバッテリー効果を直接観測し、非局所輸送や不安定性が爆縮対称性や燃焼領域に強く影響することを示しました。その結果、磁場制御が燃料点火と安定燃焼の鍵となることが明らかになりました。ドイツのスタートアップ企業Marvel Fusion GmbHからはHartmut Ruhl氏がIFE戦略を説明し、広帯域レーザーによる不安定性抑制の構想や、レーザー効率の大幅な向上、低コストターゲットの開発、さらにナノ構造体を用いた新方式が提案されました。
続いてスペイン・マドリード工科大学のJavier Honrubia氏がプロトン高速点火の現状を報告しました。コーン付ターゲット実験ではプロトンビームのガイド性が確認された一方で、変換効率の低さや磁場生成によるビーム発散が課題であることが示されました。マイクロ構造ターゲットを用いることで効率が最大5倍向上する成果も得られており、今後数百kJ級レーザーを用いた設計では効率10〜15%が必要であるとされました。大阪大学の村上匡且教授は、自己相似解を拡張した多重ショック同時収束による超高密度圧縮理論を提示しました。単一ショックによる圧縮が30倍程度であるのに対し、多重ショックでは100倍以上の高密度が達成可能と予測され、レーザーパルス列設計の基盤となることが示されました。
北京大学のBin Qiao氏による「超高速中性子源」の講演はビザの関係で中止されました。大阪大学の山田龍弥氏はレーザー駆動によるスピン偏極中性子生成の現状を報告し、LFXレーザーを用いた実験により熱中性子イメージングを実証しました。検出にはCR-39とリチウム6を組み合わせた手法を用い、2 mmの空間分解能を達成したことが示されました。今後はキロテスラ級磁場を組み合わせた実証実験が予定されていることも紹介されました。最後に大阪大学のD. Pan氏が、ブレード付きマイクロチューブ爆縮によるギガガウス級磁場生成のシミュレーションを発表しました。ターゲットに非対称性を導入することで電子とイオンの流れが逆回転し、ループ電流が形成されてギガガウス磁場が発生することが確認され、最適なブレード数は8であると報告されました。
本ワークショップは、レーザードライバー開発、炉心設計、輸送物理、点火シナリオなどの分野が有機的に連携していることを確認する場となりました。民間企業の参画によって新たな視点が加わる一方、科学的根拠の妥当性をめぐる議論も活発に行われ、研究の健全性を確保する重要性が再認識されました。今後の課題としては、高効率かつ高繰返し動作可能なレーザーの実現、ターゲット供給の安定化と低コスト化、トリチウム燃料供給の確保、さらに磁場制御による燃焼安定化が挙げられます。これらの課題を解決することにより、国際的な協力の下で核融合エネルギーの実現と超高エネルギー密度科学の発展が着実に進展することが期待されます。
2025.9.1
日本学術振興会先端拠点事業の一環として、フランスツールズで開催されるIFSA2025にてサテライトミーティングを開催いたします。
本会議では、レーザー核融合および高エネルギー密度科学に関する最先端の研究成果を共有し、国際的な共同研究の推進を目的としています。
日時
2025年9月14日(日) 13:00~17:00 (ハイブリッド形式)
会場
トゥール会議センター(Tours Congress Center, Tours, France)/オンライン
プログラム詳細はこちら。
本ミーティングでは、先進レーザー技術、慣性核融合の戦略、高エネルギー粒子源、強磁場生成などに関する招待講演を予定しています。
なお、会議は18:00からの IFSA レセプション開始前に終了いたします。
現地・オンラインいずれの形でも、多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。
2025.8.31
高エネルギー密度(HED)プラズマ物理学およびレーザー核融合の分野で活躍する滝沢龍之介博士が、2025年度Chiyoe Yamanaka Awardを受賞しました。
本賞は、レーザー核融合および関連科学の発展において、卓越した研究成果と創造性、そして将来のリーダーシップを示した若手研究者に授与される権威ある賞です。
本賞は、レーザー核融合研究の草分けとして知られる故・山中千代衛名誉教授の名を冠した賞であり、その革新性と国際的な研究コミュニティへの貢献を顕彰するものです。
受賞者は、山中先生の精神を継承し、新しい科学の地平を切り拓く若手研究者として位置づけられています。
この受賞に伴い、滝沢博士は2025年9月にフランス・トゥールで開催される国際会議「IFSA2025(Inertial Fusion Sciences and Applications)」において招待講演を行います。
講演では、レーザー駆動核融合プラズマに関する先駆的研究、特に爆縮対称性の改善やホットスポット形成の最適化、さらには先進的な計測技術の開発について紹介する予定です。
滝沢博士の研究は、レーザー・プラズマ相互作用の物理理解を深化させるだけでなく、慣性核融合エネルギー(IFE)実現に向けた新たな道を切り拓いています。
今回の受賞は、次世代の核融合科学を担う有望な若手科学者としての活躍を期待するものです。
2025.8.1
プラズマ・核融合学会誌の7月号では、最新のEUV(極端紫外線)リソグラフィ技術を総括する特集が組まれています。
本特集では、半導体製造プロセスの次世代化を支えるEUV光源の開発と課題に焦点を当て、材料科学からプラズマ物理まで幅広い視点で論考が集められています。
その中で、田中さんは国際共同研究による錫(Sn)コンタミネーション評価に関する記事を寄稿しています。本研究は、Samsung との共同プロジェクトを通じて得られた詳細データを基に、EUV光源における錫プラズマの生成メカニズムと、光学素子への微量付着が露光性能に及ぼす影響を体系的に解析したものです。実験では、時間分解分光計測と表面分析を組み合わせ、錫蒸発・プラズマ化過程から鏡面への付着挙動までを高精度で追跡しています。得られた知見は、EUV露光装置の稼働率向上や保守コスト低減に向けた実践的指針となることが期待されています。
EUVリソグラフィは、10 nm 世代を超える高集積デバイスの量産に不可欠な技術です。
本号の特集記事群は、光源設計・マスク材料・デブリ対策など多角的な課題解決の最新動向を提示しており、半導体製造とプラズマ科学の融合領域に携わる研究者・技術者にとって必読の内容となっています。